CHAGE and ASKAの活動休止、ソロとしての新作……。ASKAが語る“これまでとこれから”
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1979年8月に『ひとり咲き』でデビューして30年。その記念すべき年に無期限の活動休止という大きな決断をくだしたCHAGE and ASKA。そこにいたる葛藤(かっとう)と今の心境、ソロとしての今後、そして2月25日にリリースしたシングル『あなたが泣くことはない』と3月20日から始まる全国ツアーについてASKAに話を聞いた。
「“あのできごとが”というような具体的なきっかけはない」
■活動休止ということに関しては、いつぐらいから考えていたんですか?
ASKA:“あのできごとが”というような具体的なきっかけは本当に何もないんですよ。ただおたがい50才になって、いろいろ思うところがあったというか。もともとソロシンガーとしてやってたふたりが、ひょんなことから一緒にやるようになって。ふと、ここから先の音楽活動を考えたとき、「もし1人だったら、何にこだわって、どれぐらいのことができるのか。知ってみたいよな、オレたち」って思ったというのが正直な気持ちかもしれない。
■でも、“解散”じゃないのなら“活動休止”なんて物議を醸すようなことをあえて言わなくても……という考え方もありますよね。
ASKA:ソロ活動なら前からずっとやってるしね。確かにそんなこと言わずに、「最近はふたりともソロモードなんですよね」っていうやり方もあると思う。でもそれだと、ただファンをつなぎとめてしまうだけのことになっちゃうんですよ。CHAGE and ASKAとして活動していないのに、しかもこの先どれだけソロが続くかわからないのに。それはありえないから、そこはもう本当に誠意を持って考えていきたかったんですよね。
■逆に考えると、冷静にそう思えるくらいCHAGE and ASKAとしてやり切った感覚もあったんでしょうか。
ASKA:うん、それはある程度ありますよ。だからこそ、という部分もあるし。最初に“自分たちがこうありたい”っていうのがまずあって、うれしいことにそれがうまく伝わって。でもいつの間にか、その伝わった形に合わせてる僕らがいて。それに気づいたとき、“常に冒険をしていきたい”と言ってながら、何が冒険だ、と思ってね。
■それも活動休止の大きな理由のひとつですか?
ASKA:そうですね。実は前にも一度、CHAGE and ASKA存続の危機はあって。10年くらい前かな、ソロアルバム『ONE』を出したあと、このままCHAGE and ASKAに戻ったら解散してしまうだろうなって思ったんですよ。だから非難も誤解も承知のうえで、なかば強引にソロを続けてね。
■そのときはまだCHAGE and ASKAでやりたいことがたくさん残っていたから?
ASKA:というより、続けるのが当然だと思ってた。それで解散からの精一杯の回避として、そのときはソロを続行したんだけど、今は当時といろんなことが変わっているから、活動休止という形で、ここで一回線を引くことにしたんです。
「『L&R』は“解散”という方向で進んでいたときに書いた曲」
■ということで、ここから本格的にソロ活動スタートになるわけですが。この言いかたも今さらって気もしますね(笑)。
ASKA:今さら本格的にいこうかと(笑)。
■そのソロシングル『あなたが泣くことはない』は映画「ニセ札」の主題歌でもあるバラード曲で。これは台本などを読んで書いた曲ですか?
ASKA:昔からそうなんだけど、台本とかは一切読まないほうで。今回も映画のテーマを簡単に聞いて、監督のキム兄(木村祐一)の「いや、もういい曲であればいいです」ってひと言で書き始めた(笑)。
■確かにすごくいい曲でした(笑)。
ASKA:でしょー(笑)。この曲、PV(ミュージックビデオ)も見てもらいたいね。一瞬のインパクトがかなり大きいので。ま、それだけなんだけど(笑)。
■一方、カップリング曲の『L&R』はどうしてもCHAGE and ASKAの姿が重なってしまう曲だったんですが。
ASKA:1度“解散”しようという方向で進んでいたときに、この気持ちを曲にしようと思って書いた曲だからね。
■歌詞にも出てきますが、“素直に混ざらなかった”からここまで続いてきたんだろうなぁと思ったり。
ASKA:キャラクターの全然ちがうふたりがぶつかるのがおもしろいと言われていたCHAGE and ASKAですからね。でも同化しない距離感は抜群に良かったと思う。ただどれだけそこが良くても、このまま続けていけばCHAGE and ASKAとしての引退への花道を自分たちで作ることしか考えられなくなるって思ったんですよ。で、それはどうしてもイヤだった。自分の歴史であり、今でも大切なCHAGE and ASKAだから。だったら今、いったん活動を休止して、10年後にひょっこり「そういえばやってなかったんで。デビュー30周年ライブでーす!(笑)」って言える余地を残しておきたかったんですよね。
■いいですね、10年後の30周年ライブ(笑)。
ASKA:ねえ(笑)。でも今の課題は3月からのツアーですね。
■どんな感じになりそうですか?
ASKA:ぜーんぜんわからない(笑)。
■じゃ、抱負だけでも(笑)。
ASAKA:ステージ上と客席が同化できるツアーをやるつもりなので。今回はいろいろな含みのあるツアーになりがちだけど、そのなかでいつも通りのライブがやれて、最後に「……だろ? なっ!」って言いたいですね。
(インタビュー・文 / 前原雅子) |